minipin太郎 埼玉の空のもと

あれから11年が経ち、太郎マリオと人生終盤の日常の日記

桜井


夜 目覚める
静けさと暗闇の中 孝生は一人目覚めた
ユーチューブで 桜井を聴く
桜井の東京ドームツアー2009「声」を
また何度も何度も聴く


冷たい雨の朝だった
いつもの時間に ステップを走らせる


今日は祝日
静寂の中の 作業場
孝生は静かに仕事を始める
淡々と 黙々と


心の中 頭の中では 桜井の「声」がこだましている
彼女の声が こだまする
11年経っても 同じようにこの職場で彼女を探す
彼女とあの日の電話でのやり取りを
何度も何度も繰り返す
こう言ったら こうだったのではないか
彼女のこの言葉にきちんと反応していたら
こうなったのではないか と自問自答しながら繰り返す


忙しさの中
孝生は動けなくなっていた
ぽっかり空いた心の穴
痛んだ右足の股関節が 
安全靴のせいでひどくなっていく


:誰かがやってくれるよ


この歳になって 誰かにやってもらわなくてはいけなくなっていくことが
心のむなしさとなっていく
若い時は 歳を理由にするようになったら 俺は仕事をやめる そう考えていた


昨日痛めた 右手の中指 薬指 皮がむけ 爪も裂けている
体が いたるところで悲鳴をあげるようになってきた


それでも淡々とこなす
仕事が終わりに近づく 「ピンポン・ピンポン」鳴っている事に気づいた
機械が 悲鳴をあげている 事に気づいた
孝生は向かう
そして手伝いに入る  そっと 確実に 入る
抜いて 入れて 重ねる
重ねたものを搬送して入れてくる
作業者が楽に仕事ができるようにアレンジしてあげ それを作業者に伝える


30歳くらいの女の子だっただろうか
一生懸命この機械を担当してくれる子
「ありがとうございます^^ たくさん運んでくれもしてくれてありがとうございます」


その彼女に聞いてみた
:「共助 共援」って言葉知ってる?
:え?なんですか? それ?
:昔 37・8年前は社員だけで仕事してたんだよ 物もこんなになかったけどね
 だけどみんなで助けてあって乗り越え こなしてたんだよ その言葉だよ^^
:そうなんですか?


その向こうでは パートから正社員になった男が解束するパート女性に話しかけていた
勤務時間終了間近 流しに入ったであろうその男が 周りの仕事も考えることなく
話しかけていた
意味もわからず 意味を考えることもなく
生きている人間がする 仕事の進めかた 仕事への取り組み方
やるやつは やり続け やらないやつは こうやっている


こんな職場とも 孝生はあと4年 もしくは9年でおさらばだ


桜井の この叫び この声が 
孝生は 昔 12年前から好きだった

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