街
朝がやってきた
昨日は久しぶり いや、12年ぶりに彼女の住む街にやってきた
突然の転勤の辞令で、ふわふわしていた俺
彼女に告げると、断ることもなくすんなりと逢いに来てくれたこの街
2人で逢った最後の街
面影は消えることなく
ただ 歩く人たちは随分変わってきていた
駅から待ち合わせの場所までゆっくり歩く
そして また彼女を探してしまう
同じような年恰好の人を見つけては
彼女でないことに 過ぎた年月を感じてしまう
:ここだったかな?二人で入った店?
:ここを歩いたかな?最後手をつないで夕闇のなか歩いた通り?
ひとつひとつ12年前のことを確認して歩いた
同じように昨年の異動で5月からずっと会社に行ってないよと言う
彼を誘い、もう二人を誘い 7年ぶりに飲んだ
:もう!うっさいなぁ!
周りで騒ぐ若者たちのうるささに我慢できなかった彼女が急に怒って
びっくりしたのも昨日のことのように思い出す
今3人で飲んでいる時もその時と同じように周りが大きな声で騒いでいた
:あの時とおなじだな....
彼女と出会うことはもちろんなかった
この街で 今も暮らしているのか?
この街の 空で羽ばたいているのか?
わかることもできないまま 孝生は電車に乗ってこの街をあとにした